Mars89は、妥協のないエレクトロニック・ミュージックで、東京のアンダーグラウンド・クラブシーンで最もユニークでエキサイティングな存在として知られている。 2008年に10代後半で東京に移住して以来、世界で最も人口の多い都市のひとつで生活することの難しさについて、あらゆる形で表現する人物として地位を確立してきた。 これまでの彼のディスコグラフィーは、様々なスタイルが混在している。UKダブステップ全盛期のサブベースや、ブリストルの特徴的なベースミュージックシーンの突然変異したリズムなどの音楽的な影響に加え、David LynchやDavid Cronenbergなどの映画監督、特に不気味で忌まわしいものに対する彼らの比類ない才能からも大きな影響を受けている。 クラブの群衆の潜在的なエネルギーに即座に火をつけるトラックや、ディストピアやバイオテクノロジーの崩壊を連想させる不穏な風景にリスナーを連れて行くアンビエントトラックが彼の武器であり、この2つをシームレスに織り成す能力こそが、自分の感性を使って世界全体をデザインするアーティストとしての彼の特徴である。このことは、Bokeh Versionsとの境界を超えたVRの探求や、Patrick Savileとのコラボレーションにも反映されている。 彼のハードウェア機材によるライヴセットの名義であるTemple Ov Subsonic Youthでは、空間を震わせるドラムマシンの重低音と、多様なサンプリングが重なり合うことで生み出される歪んだサウンドにより、混沌としたフロアを作り出すことに成功している。 また、彼が立ち上げたレーベルNocturnal Technologyは、その名の通り、夜のエレクトロニック・サウンドをコンスタントにリリース。レーベル名のNocturnal Technology(夜行性の技術)は、DJの技術が夜間に活気づくことを意味している。ロゴは、夜間に活動し音波を見通す動物であるコウモリへのオマージュであり、レーベルのコンセプトである 「夜行性の技術 」を象徴している。 音楽以外では、UNDERCOVERの高橋盾とのコラボレーションプロジェクトでミリタリーウェアを解体し、真のパンク精神で反戦を訴えるコレクションを発表したほか、同ブランドからレコードもリリース。後者は、UNDERCOVERのAW19コレクションのために制作したショーのサウンドトラックをベースにしたもので、Virgil Ablohが主催するクラブナイト「Sound Design」で高橋がキュレーションした際に共演したThom Yorke、Zomby、Low Jackのリミックスが収録されてる。この3人のアーティストがリミックスの依頼にすぐに応じたことは、Mars89が世界の同世代のアーティストからいかに高く評価されているかを示している。 Mars89は、東京のアクティヴィストコミュニティの重要な存在でもあり、Protest Raveでは、サウンドシステムを積んだトラックでハードテクノを鳴らしながら東京の象徴的な景色の中を走り抜け、若者に政治的活動への参加を促している。